
三陸でとれる魚が変わるのはなぜ?海水温・海流・魚の回遊を分けて考える
三陸では、「昔と水揚げされる魚が変わった」という話を、海水温だけで説明したくなることがあります。でも実際の海は、単に全体が同じように温まるわけではありません。親潮、沿岸親潮、黒潮系暖水、津軽暖流などの位置や強さが変わり、魚の回遊や養殖環境にも影響します。
近年の岩手沿岸では、高水温と低水温の両方を含む極端な変化が起き、岩手県水産技術センターは漁獲量や魚種組成の変化を研究課題として挙げています。大事なのは「魚が全部北へ逃げた」という一言で終わらせず、魚種ごと・漁法ごとに影響が違うと考えることです。

三陸沖では、本当に記録的な高水温が起きた?
気象庁は2023年8月、三陸沖で2022年秋以降に海洋内部の水温が記録的に高くなっていると発表しました。2023年7月の観測では、北緯38.5度・東経144度付近の海洋内部で平年より約10℃高い水温を確認しています。
この「約10℃」は三陸の海面全体が一律に10℃上がったという意味ではありません。特定地点・深さ方向の観測で確認された大きな偏差です。気象庁は、黒潮続流が三陸沖まで北上したことが主な原因と考えています。
水温が高いと、どんな魚が増える?
「何℃上がればこの魚が増える」という単純な対応にはできません。魚は水温だけでなく、餌、産卵、回遊経路、海流、資源量など複数の条件で分布します。
岩手県水産技術センターは、県沿岸に親潮水、沿岸親潮水、津軽暖流水、黒潮系暖水などが流入し、近年は黒潮続流の北偏などによって海況が極端に変化し、漁獲量や魚種組成に変化が見られるとしています。

高水温なら、三陸の魚は全部減る?
それも違います。冷たい水を好む魚には不利になる場合がある一方、暖かい水に関係する魚が沿岸へ入りやすくなることもあります。同じ年でも魚種によって水揚げの動きは違います。
たとえば岩手県の2024年度漁況情報では、マイワシの定置網水揚げが過去5年平均を大きく上回った旬がある一方、サバ類やマダラ、ケガニなどは時期によって異なる動きを示しています。高水温という一つの要因だけから、全魚種の増減を説明することはできません。
養殖にも海水温の変化は関係する?
関係します。岩手県水産技術センターは2024年3月、県中南部沿岸で表層付近の水温が数日のうちに急上昇し、ワカメなどの海藻類やホタテ・カキなどの二枚貝養殖への影響に注意を呼びかけました。
養殖は人が管理するから海況と無関係、というわけではありません。海の中で育てる以上、水温、栄養塩、急激な温度変化などの影響を受けます。
魚の「旬」も、固定したカレンダーだけでは見られなくなる
海況が変われば、魚が沿岸へ来る時期や水揚げされる魚種も変化します。そのため「この魚は毎年必ず○月が旬」と固定するより、その地域の漁況や、その年の海況を見る意味が大きくなります。
もちろん、海水温が変わったから伝統的な旬の考え方がすべて無意味になるわけではありません。魚種の生活史と、実際の水揚げの両方を見る必要がある、ということです。
三陸の海は「豊か」だけではなく「変化する海」
三陸の海を説明するとき、親潮と黒潮が出会う豊かな漁場という表現だけでは足りなくなっています。実際には複数の水塊と海流が季節・年によって動き、その変化が魚の回遊、定置網の漁獲、養殖の管理にも関わります。
だから、三陸の魚を知ることは、魚の名前を覚えるだけではありません。その年、その季節に海がどう動いているかを見ることでもあります。
よくある質問
三陸沖の海水温は、平年より10℃上がった?
2023年7月に特定地点の海洋内部で平年より約10℃高い水温が観測されました。海面全体が一律に10℃上がったという意味ではありません。
高水温になると、冷たい海の魚は全部いなくなる?
一律には言えません。分布や回遊への影響は魚種ごとに異なり、餌や資源量、海流など他の条件も関係します。
海水温の変化は、養殖にも影響する?
影響する可能性があります。岩手県では急激な高水温時に、ワカメ、ホタテ、カキなどの養殖管理について注意情報を出した例があります。



































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